オフィシャルインタビュー

――TVアニメ『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』のOP主題歌でデビューを飾る皆さんですが、まずはバンド結成までの経緯を教えてください。

ジョシュア・K・キリサメ(以下、ジョシュア): 僕たちは『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』(以下、ダブデカ)の舞台であるリスヴァレッタという都市の出身です。ドラムのダニエルは地元で一緒につるんでいた腐れ縁ですが、ほかのメンバーとは東京へ留学しているときに出会いました。全員がJ-POPやアニメなど日本のポップカルチャー好きだったこともあって、「東京で音楽やろうぜ!」と一致団結したんです。

――『霧雨アンダーテイカー』というバンド名の由来はなんでしょうか?

ジョシュア: 実は僕たちは雨男で、メンバー5人が集まるといつも雨が降るんです(笑)。結成した日はもちろん、リハ―サルやレコーディングで機材を運ぶ時もピンポイントで雨に降られたり…。天気に弄ばれる日が続いて「また雨なのか……」と落ち込むこともありました。でもそんな雨がもたらすネガティブな感情を音楽で晴らすことが、雨男たる我々の使命ではないかと。そこで「憂鬱な気分を葬り去りたい」という願いを込めて『霧雨アンダーテイカー』と名付けました。

――降水確率は何パーセントぐらいですか?

ダニエル・A・ヒサメ(以下、ダニエル): 99パーです。砂漠に行ったらオアシスができるレベルです(笑)。ちなみにバンドの衣装をレインコート風のデザインにしたのは、雨対策も兼ねています。メンバーは全員シャイなのでマスクで顔を隠しているんですが、気持ちを全力で乗せた演奏をしているので、それぞれのパーソナリティにも注目してほしいです。

――『ダブデカ』の主題歌に決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

ジョシュア: アニメの主題歌アーティストに憧れていたので嬉しかったですし、光栄に感じました。視聴者の方に「OPがこの曲で良かった!」と感じてもらえるように、作品に寄り添うことを第一に作ろうと思いました。聴けば自然と前向きになっていくような、疾走感のある曲を目指しましたね。

――主題歌「ステレオとモノローグ」を作るときに軸となった部分はどこでしょうか?

ジョシュア: ダグとキリルのバディ感です。『ダブデカ』は刑事同士がコンビを組む「バディもの」と呼ばれるジャンルの作品です。そのバディ感を曲全体で表現したかったんです。それを最も良く出せているのが、歌詞ですね。「ステレオとモノローグ」というタイトルもそうですが、「希望と孤独」や「正義と痛み」など、二つの概念を対峙させるようにしました。ダグとキリルと同じように、歌詞でも異なる2つの言葉が一つの大きな意志に変わっていくんです。

――「バディもの」であることが曲作りのテーマになったんですね。

ジョシュア: はい。バディ感はメロディでも意識しています。「ステレオとモノローグ」はリードパートが二つ存在していて、頭のイントロではシンセサイザーがリードを取っていて、そこにギターを上から乗せることで、互いに競い合う感じを出しました。シンセとギターの掛け合いに、ダグとキリルのイメージを重ねています。とくにシンセサイザーが生み出すデジタルの音色は、僕たちの音楽性にとって欠かせない存在です。シンセ担当のアダムと一緒に細部までこだわって作り上げました。

――通常のバンド編成にシンセサイザーが加わると、どんな変化が生まれるのでしょうか?

ジョシュア: 生の楽器に存在しないデジタルの音がプラスされることで、より幅広い表現が可能になるんです。たとえば、アナログな楽器のテクニックで上手くマッチせず、限界にぶつかってしまうときも、アダムのシンセサイザーが加われば、その壁を軽々と越えられると思っています。アナログとデジタルが融合することで、二次元が三次元になったような奥行きが生まれて、表現の幅が広がっていくんです。今回は『ダブデカ』のバディという要素にフィーチャーしましたが、それ以外にも「キャラクター」や「刑事という職業」など、さまざまなアプローチをしてみたいですね。アニメの主題歌に携わるのであれば、作品が持つあらゆるテーマを引き出して曲を書くことも、僕たちに課された重要なミッションだと思っています。

――なるほど。それではカップリング曲は『ダブデカ』の主題歌と異なるアプローチで表現しているのでしょうか?

ジョシュア: そうなんです。「Don’t Think Feel So Good!!!」はキリルの性格をテーマにした曲です。タイトルは『ダブデカ』の作中に出てくる彼の座右の銘「考えるな、気持ちがいい。」から由来しています。僕たちはこの言葉を「考えず感じるままで、大体オッケー」というニュアンスの言葉と独自に解釈し曲にしました。まぁ文法としては間違っているんですけど(笑)。ヒーローになりたいと強く願うキリルの真っ直ぐな心や、決して諦めない強さをイメージしました。「Gunpowder Ballad」はアダムがトラックを作った曲です。デジタル色が強めですが、ベテラン刑事のダグをイメージして、アダルトでエキゾチックな妖しさを表現しています。カップリングの2曲で「ステレオとモノローグ」とはまた違った作品の広がりを感じてもらえると嬉しいです。

――「ステレオとモノローグ」ではMVを撮影されました。映像のコンセプトについてお願いします。

ジョシュア: 故郷のリスヴァレッタは近未来とクラシックが入り混ざったような街です。その雰囲気をイメージできるMVを目指しました。ロケは廃工場で行いましたが、完成映像ではCGもふんだんに盛り込んでいて、サイバーパンクのような世界観に仕上がっています。

――今後の目標を教えてください。

ジョシュア: ライブをやりたいですね。野外だと雨が降るとご迷惑がかかるので、まずは屋内から、と思っています。ただ「ドレスコードをレインコートにした晴天中止の野外ライブはどうだろうか?」というおもしろい案も出たので、それもアリかなと(笑)。でも雨は僕たちに意地悪なので、そういう日に限って晴れてしまう気がします……。もし晴れたら、人工的に雨を降らせて無理矢理開催するのも手ですね(笑)。あとは声優さんに曲を作りたいという密かな野望もあります。我々が作ったダグとキリルの曲を、声のプロである声優さんに歌えてもらえたら最高でしょうね。その第一歩として、まずは「ステレオとモノローグ」をライブで披露したいです。

――12月5日にシングルが発売されます。リリースに向けてメッセージをお願いします。

ジョシュア: 霧雨アンダーテイカーは皆さんの心の雨雲を吹き飛ばすようなバンドになりたいと思っています。なにか落ち込むことがあったときは、僕たちの音楽を聴いて元気を出してほしいです。メンバーの衣装は全身真っ黒ですが、曲自体はキャッチーで楽しくて、気持ちがブーストしていく作品に仕上がっています。ぜひガッツリ聴いてください!

(了)